祖母の家の柱時計が、毎朝決まって同じ時刻で止まっていた話

約3分
祖母の家の柱時計が、毎朝決まって同じ時刻で止まっていた話
共有: X LINE

Aさん(仮名・31歳女性・関東在住)から、メールで届いた話。子どもの頃からずっと不思議に思っていることがある、と。仮名と地名をぼかす条件で承諾をもらっている。

母方の祖母の家の話です。北のほうの、雪が深い土地。

家に、古い柱時計がありました。振り子の、ぜんまい式。祖母が嫁いできたときからあったそうで、もう何十年も前のもの。

文字盤は黄ばんで、ガラスの扉には小さなひびが入ってました。振り子は真鍮の、丸いやつ。一時間にいっぺん、ボーン、ボーン、と低い音で時を打つ。

時計は、茶の間にありました。冬はその部屋だけストーブをつけて、家族みんなで集まる。柱時計の音が、いつも背中のほうで鳴っていました。

その時計が、毎朝、止まってるんです。

決まって、4時48分。

祖母は朝起きると、ぜんまいを巻きます。チチチ、と音をさせて、振り子をそっと押して、また動かす。

なのに次の朝には、また止まってる。針は、4時48分。

子どものころ、私はそれが面白くて、何度も確かめました。寝る前は動いてる。起きると、4時48分で止まってる。毎回です。

中学のころ、一度、夜中じゅう起きて見ていようとしたことがあります。止まる瞬間に何が起きるのか、見たくて。

でも、気づくと朝で、布団の中でした。時計は、いつもどおり4時48分。何度やっても、その瞬間だけは見られない。

その家に泊まると、夜中に時計の音で目が覚めることがありました。早い時刻に起きても、針はちゃんと動いてる。止まるのは、決まって、私が眠っているあいだ。

一度、時計屋さんに見てもらったこともあるそうです。でも、どこも悪くない、ちゃんと動くはずだ、と言われたきり。

4時48分が何の時刻なのかは、誰も知りません。祖母の誕生日でも、命日でもない。家族の誰かに関わる時間でもない。ただ、その時刻。

祖母に、なんで止まるの、と聞いたこともあります。さあねえ、この家に来たときからこうだから、と。気にする様子もありませんでした。

私もいつのまにか、それが当たり前になっていました。あの家の時計は、朝には止まっているもの。

古い写真にも、その時計は写っています。私が生まれる前の、母が子どもだったころの一枚。背景の柱時計は、やっぱり4時48分を指していました。

祖母が亡くなったのは、3年前です。

家を片付けに行ったとき、時計はもう、止まったままでした。誰も巻かなくなったので。

なんとなく、私はぜんまいを巻いてみたんです。最後に一回だけ。チチチ、と音をさせて、振り子を押して。時計は、また動き出しました。

次の朝、誰もいない家に、もう一度見に行きました。

4時48分で、止まっていました。

あの時刻が何だったのかは、今も分かりません。

時計は、私が引き取りました。今は、私の部屋にあります。動かしていません。針は、4時48分のまま。

こっちにも、もうひとつ

夜のあいだ、私の車に誰かが乗ってるみたいで

次の話を読む →