旧吹上トンネルをバイクで抜けようとしたら、ミラーの中の白い女が見るたび近づいてきた話
Kさん(仮名・36歳男性・会社員)から、メールで届いた話。学生のころの体験だという。
東京の青梅に、旧吹上トンネルという、古いトンネルがあります。
心霊スポットとして、けっこう有名な場所です。今は新しいトンネルがあって、旧道のほうは、細くて暗い。
大学のころ、自分は、バイクでよく夜走りをしていました。
昼は人が多くて走れない道も、夜なら空いている。それだけの理由でした。
その夜も、ひとりで、なんとなく旧道のほうへ入っていったんです。肝試しというより、ただの通り道のつもりで。
旧トンネルは、車一台がやっと通れるくらいの幅でした。中は、まっくら。
ヘッドライトの光だけが、濡れたコンクリートの壁を照らしていました。
そのライトのほかに、光はひとつもない。
夏なのに、トンネルの中だけ、空気が冷たい。
トンネルの真ん中あたりで、急に、エンジンの調子がおかしくなりました。
ライトが、すうっと暗くなって。バイクが、止まりそうになる。
こんなところで止まったら最悪だ。そう思って、自分はアクセルを回しました。
なんとか持ち直して、トンネルを抜けようとしたとき。
ミラーに、何か映ったんです。
白い服の、女の人でした。トンネルの中の、自分の後ろに、立っている。
顔は、見えませんでした。うつむいているのか、髪で隠れているのか。
さっきまで、誰もいなかった。
気のせいだと思って、もう一度ミラーを見ました。
女は、さっきより、近くにいました。
もう一度見ると、また、近い。自分が見るたびに、距離が、縮んでいるんです。
3回目に見たときには、もう、すぐ後ろまで来ていました。
自分は、ミラーを見るのをやめました。前だけを見て、トンネルを飛び出した。
外に出て、しばらく走ってから、こわごわミラーを見たら、もう、誰も映っていません。
心臓が、ずっと、ばくばくしていました。手が、汗でハンドルの上を滑るくらい。
バイクの調子も、何事もなかったみたいに、元に戻っていました。
あれが何だったのか、いまでも、分かりません。
あとで、あのトンネルのことを調べようとして、やめました。
知らないほうが、いい気がして。
それ以来、あの旧道には、二度と入っていません。